こんばんは。
在りし日の留萌線放浪記、いよいよ最終章です。
前回の模様(恵比島)はこちらからどうぞ。
本当ならば全駅巡りたいところですが、今日は最終日ということで行程をぶっ壊すわけにもいかず。札幌方面に戻るためにも、次が最後の訪問です。残された3駅からラスト1駅に選んだのは、留萌から2駅隣の藤山(ふじやま)でした。
ここで降り立ったのはなんと自分1人だけ。乗る方もおらず、廃線間近ながら「誰もいない駅」への訪問を果たしてしまいました。下り始発(ちなみにもうすぐ9時)だからひとまず留萌の窓口で用を済ませたいのかな?
開業:1910年
アイヌ語由来…じゃないので後述
乗車人員:0.0人(2021年度)
停車本数:上り5本/下り6本(2022年度)
駅前広場に出て振り返ってみると、明らかに不自然な配置の駅舎が確認できました。元々は事務室と待合室を有する大きな木造駅舎でしたが、無人化された後に写真左側の事務室部分だけを綺麗さっぱり解体したようで。
包丁でまっすぐ切り落とされたような佇まいとなり、待合室としての機能のみを果たしていました。乗車人員がついに0人を叩き出してしまうほどの過疎っぷりながら、ダルマ駅舎に改造されずに耐え続けたという意味では、ある種の奇跡なのかも。
待合室はこんな感じ。普段から手入れされているのかホワイトバランスもびっくりなくらいに綺麗な白壁、除雪器具や駅ノートもばっちり完備。でも実は寄せ集めの建材で改修されたパッチワーク状態だというのだから不思議なもんです。
余談ですが、ここ藤山と隣の幌糠の間にはかつて桜庭(さくらば)駅があったそうな。1963年に仮乗降場として誕生し、JR化後に駅となったものの、1990年に廃止されるという短命さでした。同じような境遇に東幌糠(現・峠下~幌糠)もありますよ。
駅舎に向かって右手には、雪に埋もれた石碑が鎮座しています。「藤山開拓之碑」と刻まれている通り、実はここら一帯は藤山要吉(ようきち)が所有していた農場でして、その主の名が駅名として採用されたというわけです。
要吉は明治時代の実業家で、主に小樽での海運業を通じて北海道の産業振興に寄与しました。開拓の地をそれまでの海から内地へと移すべく選ばれたのが、現在の藤山駅周辺でした。
留萌市が誕生した際には地名としての「藤山町」が誕生し、彼の功績がますます称えられることに。小樽と留萌、実はこんなところで繋がってたんですね、しみじみ。
そんな事情を知ってか知らずか、函館線直通の旭川行きが雪を巻き上げながら爆走していきました。お隣の大和田と仲良く通過されるわけですが、そりゃあ駅前の様子を見たらこれは仕方ない。
歩いて数秒で国道233号という好立地条件ながら、集落は小規模なものなので利用者は皆無ということでしょうか。いやむしろこれがモータリゼーションの末路かな…
さて、沿線の駅巡りは一通り済ませたので最後にゴール地点へと向かいたいところ。本来ならば留萌線を使うべきですが、さすがに待ってられないので並行して走る路線バス(ここ大事)にお世話になります。
沿岸バス・道北バスが共同で運行する「留萌(旭川)線」は、沼田町街ではなく碧水(北竜町)を経由するものの、概ね留萌線に沿って停留所が設けられています。峠下のように少し離れた場所もあったり、ここ藤山は駅前すぐの場所にあったり、各駅訪問の際に重宝された方もいらっしゃるのではないでしょうか?
見てびっくり乗ってびっくり、リクライニングシートや電源が完備された高速タイプ車両でした。写真上部にちらっと映る押しボタンが証明する通り、れっきとした路線バスなんですけどねえ~
留萌線の部分廃止後、この路線と新設された特急「あさひかわ」号(高速バス、1日1往復)が代替路線となりました。乗合タクシーも拡充され、他の廃線区間と比べてもなかなか好待遇なような気がしますが、多額の補助金を以てしても赤字を出し続けるのが現状なんだとか。
【重要なお知らせ】
— 沿岸バス@5/1 萌えっ子第15シーズン始動! (@enganbus) 2023年4月28日
留萌旭川線(留萌十字街~碧水~秩父別役場前~深川十字街~旭川駅前)は、地域間幹線系統として国・北海道から多額の補助を受けていますが、これら補助金をもっても欠損を賄いきれず、著しい赤字が続いています。現在、関係市町と今後の存廃について協議を進めています。#沿岸バス pic.twitter.com/jWnRL6Djpp
似た境遇に夕張支線(2019年4月廃止)がありますが、夕鉄バスが2023年10月末で新夕張駅~新札幌駅を含む3路線を廃止することを発表し、ちょっと話題になりました。
使う人がいたとしても昨今のバス事情は厳しいというのに、使う人がいないとなるとその結末は想像に難くありません。良くも悪くも必要最低限のサービスを提供するためにも、今まさに「真の転換期」を迎えているのでしょう。
そんな考え事をしながら、この放浪の終着点へと向かいます。
次回に続きます。ありがとうございました。