あすなろ撮影録

大学生の備忘録的ななにかです

ありがとう211系0番台〈解説編〉

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こんばんは。

今日は年度末ということで、立場やら環境やらがひと段落な方も多いのではないでしょうか。悔いること喜ぶこと様々だとは思いますが、今一度この1年を整理してみるのも面白いのかもしれませんな。

そんな3月から4月は別れと出会いの季節、東海地方から去っていったあの車両に関するお話です。

 

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6時過ぎの亀山駅、改札口の待合室の一角には「快速」とともに「惜別」の文字が目立つオブジェが飾られていました。よく見ると車両の方向幕には「おわかれ ありがとうございました」との文字が。どうやら桑名駅にもあったようです。

2022年3月のダイヤ改正に関連して、中央線において新型通勤型電車315系が本格的に運用を開始しました。それと引き換えにJR東海唯一の国鉄型…というか国鉄から継承した車両だった211系0番台(4両×2本)が引退することになりました。

 

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211系といえば、113系などに代わるフルモデルチェンジ車として本州地区で広まった、貫通扉と左右の黒枠窓でお馴染みの近郊型電車です。初期車(国鉄型)は1985年から、民営化後もJR三者によって様々な形式が誕生しました。

JR東海に限ると、国鉄最後のダイヤ改正となった1986年11月に東海道線の増発に伴い0番台4両が2本だけ登場。民営化後は全車ロングシートの5000番台の製造が始まったため、東海地区ではたった8両の存在になってしまいました。

 

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当時のキャッチコピーは「スマートな外観が美しい新製車両」「より快適な暮らしを結びます」。青帯に白のストライプという独自カラー(民営化後に湘南色へ変更)で、快速「シティライナー」として並行する名鉄に真っ向勝負を仕掛けました。

0番台ということで、クーラーの形状や方向幕の内容が少々異なるようです。後に313系増備による120km/h対応工事(1999年)やバリアフリー化(2005年)など、時代に合わせた改造も行われています。

 

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ちなみに現在はそれぞれK51編成とK52編成と名付けられていますが、後述の通り転属を繰り返した結果、K1→C2→K52もしくはK2→C1→K51と途中で番号が入れ替わる羽目に。

つまりトップナンバー、211系0番台で言えばクモハ211-1を組み込んでいるのはK51編成ではなくK52編成なんですね。ついでに「0番台のクモハ211形」はこの2両だけというプレミア付き。

他3両は東京地区の211系0番台の続番となっていることから、もしかしたらJR東海にも0番台を製造する予定があったのかもしれません。

 

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車内も拝見。ドアの化粧板や妻窓がないベージュ調の車内に目立つのは、蘇芳(すおう)色の座席モケットです。そして何より特徴的なのが、初期車特有のセミクロスシート

中央部は4人掛けボックスシート、ドア付近はロングシート(というよりもスペースの都合でしゃーなし感が凄いですが)とし、快適さと混雑緩和を両立しています。

窓枠のちょっとしたスペースの他、よく見るとボックスシート裏にロングシート着席者のための肘掛けも備え付けられています。地味かつ実用性があるかは別として、さりげない配慮もなされています。

 

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国鉄だなあ」というよりは「時代だなあ」と感じることができる名残として、灰皿のビス穴痕があります。当時は車内での喫煙も当たり前だったようで、先述のボックスシート裏のFRP(繊維強化プラ)にも取り付けられていたようで。今では考えられん…

さすがにこの取り付けは廃止されたものの、柱のコート掛け用のフックや頭上の座席番号などは311系どころか313系にも伝承されています。そうこれ名目上はコートや帽子を掛けるものですからね、まあ難しい問題なこった。

 

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新製時は神領に所属し、東海道線の快速がメインだったことから大垣に転属。1989年に311系が登場すると徐々に快速運用を縮小しながらも、普通列車として細々と活躍していました。

転機は2011年、神領に里帰りしたと思ったら関西線の朝夕とほんのわずかの中央線の運用(2014年以降は回送のみに)だけになってしまいました。313系シリーズが幅を利かせ、117系が淘汰されていく中で健気に名古屋と亀山を往復していたわけです。

最後の砦となった関西線では平日の区間快速から土休日の快速まで、マルチな運用をこなしていました。車齢や設備の点から運用も固定化されていたので、同じく関西線を賑わせたDD51形機関車のついでに撮った方も少なくないのでは?

 

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2021年11月に315系の運転開始日が発表されるとともに、「国鉄から継承した車両(は、2022年3月中に引退し、当社が保有する全ての車両が会社発足以降に新製した車両に」なるとの明言もなされました。

そして2022年3月5日、中央線で315系がデビューする一方でK52編成が、翌日6日にK51編成が運用を離脱。7日に両者を連結した8両編成を組んで西浜松へと旅立ちました。

手前の211系から奥の313系へ。かつてはともに関西線を走った車両でしたが、今は313系のみに。何なら近い将来は315系に取って替わられるのかもしれません。

 

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夜明け前の亀山駅には出発点検を行う211系0番台の姿が。平日ならば当たり前の光景でしたが、それは過去帳入りしたものに。ダイヤ改正を機に5000番台の乗り入れも終了したため、今や三重県で211系そのものを見ることはできません。

本州3社の中で圧倒的に在来線路線長が短いながらも、その分車種が少ないながらも、数多くの魅力ある特徴を有していたのが211系0番台です。せっかくなので…というか今まで乗ってばかりだったので、もう少し追いかけることにします。

 

次回〈撮影編〉に続きます。ありがとうございました。

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